樹木の繊維がねじれていることを「スパイラルグレイン」”spiral grain” という。
木の表面に右手をあてて人差指以下の指の方向に樹木の繊維がねじれているのをライトハンド、その逆をレフトハンドという。
紐やワイヤーのより方の呼び名、Zより、Sよりというほうがわかりやすいかもしれない。

ライトハンドまたはZより レフトハンドまたはSより
アメリカ、カナダで組織された国際ログビルダーズ協会発行の”2000
Log Building Standards”にはログハウスに使用するログの規定があり、このなかでもライトハンドとレフトハンドのログの使用区分が書かれている。
以下にこれを抜粋すると

上表はライトハンド、レフトハンドおのおのについてねじれの量によりグレードを決めている。
同じグレードならばライトハンドのほうがレフトハンドよりねじれ量がおおきくてもいいことになっている。
なお、ねじれ量の規定は以下のとおり。

これら straight, moderate, severe の3つのグレードとライトハンド、レフトハンド2つの区分でログ壁のどこに使ってよいかの指針としている。
たとえば、
○レフトハンドのsevere グレードはハーフシルログにしか使えない。
(ハーフシルログは最も加重がかかることと半割りのため容易にたわむことから変形を抑えることが容易であるため)
○straight グレードはどこに使ってもよい。
などとなっている。
また、ロバートチャンバー氏の著書 Log Building Construction Manual にもログ壁を積むときはレフトハンドログは乾燥するとねじれが大きくなるので注意するように書いてある。
この本は私が見たログビルディングの本の中で最も詳しくまた、わかりやすい言葉で書かれたすぐれたマニュアルだと思う。多少なりとも英語の読める方はぜひ一読を薦めたい。
この本の中に理由が書いてある。
樹木は若いときはたいていレフトハンドのねじれで育つ。通常はある年からねじれの向きが変わり、ライトハンドにねじれる。ところが中にねじれの向きが変わらないやつがいて、この場合、樹木全体がレフトハンドのねじれのまま育つ。
これらが乾燥したとき、表面がライトハンドのログは中心部はレフトハンドのねじりをもつので変形が相殺されるが、表面がレフトハンドのものは思いっきりねじれ変形が出る、ということのようだ。
日本で、このことについて書いてあるログビルディングの本がないかどうか調べてみたが見当たらなかった。
木材の図書の一部にはらせん木里について記載があった。らせん木里とはスパイラルグレインのことであろう。
カラマツのらせん木里について、以下の図とともに述べられていた。
カラマツは針葉樹の中で木里が大きくねじれる特徴を持つ。
若いカラマツはSよりのらせん木里だが、成熟するとねじれが反転する。
ただし、これを使った材が乾燥したらどうなるかというようなことには触れていなかった。

おそらく日本ではスギ、ヒノキなど木里がまっすぐな材が使われるばあいが多いため、ねじれは問題にならないからだろうと思われる。
しかし外材を輸入してログハウスを作るときは問題にならないのだろうか。
そんなにねじれた材ははいってこないのだろうか。
もし個人でログを輸入する場合は気をつけたほうがよいかもしれない。
もし私はこの件についてもっと詳しく知っている、あるいはあの本に書いてあったなどの情報がありましたら歓迎いたします。ぜひ教えてください。
それって本当にサドルノッチになっていますか?
(1)ノッチの種類
ログ壁の交差点をノッチという。ノッチにはいろいろな種類があるが、代表的なものはラウンドノッチとサドルノッチである。
ラウンドノッチはログの交差するところを丸く切り欠いたもので、サドルノッチは下段ログの上部を馬の鞍のように削り取ったものである。

ラウンドノッチ サドルノッチ
おのおのの特性を理解するには、まずセトリングについて知る必要がある。
ログハウスは生木の状態で組み立てるため、時間がたつと乾燥して収縮する。
収縮方向は周方向が最も大きく次に径方向が大きい。軸方向の収縮は一般に無視できるほど小さい。
周方向の縮みは割れとなる。これはひとまずおいておき、ログ壁で問題となるのは径方向の縮みだ。ログが細くなってログ壁の高さが小さくなることをセトリングという。
ログハウスはセトリングを意識して組み立てる必要のある建物である。
いってみれば結構いい加減な建物だということかな。住んでいるうちにだんだん天井が下がってくるなんて。細かいことを気にする人には向かないかも。
夜寝ている間に壁がぎしぎし言って下がってくるらしい。お化け屋敷みたい。
ノッチに関してのログの収縮の影響は、径が細くなるがノッチの長さは変わらないということだ。
したがってラウンドノッチはログが収縮するとノッチ部分に隙間ができるという欠点がある。隙間ができるとログはノッチの部分では固定されていないことになるから不安定になる。
これを防ぐため、サドルノッチが考案された。
ラウンドノッチの収縮 サドルノッチの収縮
ログが収縮しても上段のログがサドルの斜面(スカーフという)を滑り落ちるように下がってくるため隙間が発生しない。
もうひとつのサドルノッチの効果としては、リカーブの発生を抑えることが上げられる。
リカーブとは、ログの重なりが大きく、直径の半分を超えて重なる場合、ノッチの入り口が狭くなって上段ログを重ねるのに困難が起きることである。
サドルノッチではスカーフを十分取ることでリカーブを抑えることが可能である。
(2)サドルノッチの機能および条件
サドルノッチの条件はログが収縮してもがたが出ない。また隙間が開かないことの二点である。
ログ壁は実際にはノッチだけではなく、グルーブでも固定されているが、検討を簡単にするためにグルーブでの固定の効果は無視する。
ログは収縮すると全体に細くなるのでサドル自体も細くなる。したがって下段ログとの干渉を無視するとサドルに沿って上段のログが下がり、サドル上部が当たってしまう。これを防ぐためにリセスと呼ばれる空間をノッチ上部に設けておく。
こうすることでサドルの斜面上だけで上段ログを支えることができるようになる。
リセスは次のログが重なると見えなくなってしまうので問題はない。
サドルの下限としては少なくともリカーブを避ける位置まで切っておく必要がある。ログの重なり具合によってはまったくスカーフを取らなくともリカーブにならない場合もあるが、スカーフの取り方が少ないとラウンドノッチ同様、収縮後に隙間が出てしまう。
では、その位置をどうやって決めるのか。
(次回に続く)
こだわりのログビルディング研究(その3)フォーポイントサドルノッチ
今回はサドルノッチのスカーフのきり方とフォーポイントサドルノッチについて述べる。
その前にラウンドノッチの交差部分について確認しておこう。図1でログA,B,Cの交差点に着目しよう。ログAとBの境界線が@、ログAとCの境界線がA、ログBとCの境界線がBである。A,B,Cの交差する点には3本の線が集まっている。
図1 図2
一方サドルノッチではログの上部にスカーフを切るため図2のようになる。境界線@、A、Bに加え、スカーフ上部の線Cとスカーフ下部の線Dの合計5本の線が集まっている。
ではスカーフ上端の位置はどこが望ましいのだろうか。
スカーフ上部の線Cの位置が低く、ログCとの境界線Aに接触していない場合が図3-1、ちょうど@、A、Bの交点で当たっている場合が図3-2、境界線Aにもぐりこんでいる場合が図3-3である。
図3-1の問題点はリセスが見えてしまうことである。リセスを設けないとラウンドノッチと同じようにログをきることになる。ログがシュリンクしたときスカーフ部に隙間が発生する。したがって図3-2あるいは図3-3であることが必要である。

図3-1 図3-2 図3-3 図3-4
実際問題として図3-2のようにCの線がノッチ部分でAとちょうどぶつかるようにするのは困難である。ログA のスカーフはログBの下にある。ログCを乗せて見なければAのラインがどこに来るかはわからない。
結局、図3-3のように十分高めにスカーフ上端の位置を設定してやる必要がある。
スカーフ上端の幅がログCのグルーブ幅より細ければ図3-3の状態になる。このときの断面を図3-4に示す。ただこの段階ではログCのグルーブ幅は正確にはわからない。したがって細めに設定してやることが望ましい。
次はスカーフ下端の位置である。こちらはもっと重要だ。スカーフ下端はリカーブを避けるよう十分低くなければならない。
リカーブとは図4のラウンドノッチの場合(実線)が示すように、ログの重なり量が多く、切り込んだノッチの入り口が細くて納められないことを言う。

図4
スカーフの大きな目的はこのリカーブを防ぐことである。スカーフを切った状態を図4の破線で示す。
スカーフ下部の線Dについてもおのおのの位置について検討しよう。
線Dが図5-3のように高めの場合、リカーブカットになっている可能性がある。これは避けなければならない。
スカーフ下部の線Dは図5-1、図5-2のように低めになっていればよい。図5-2のようにDの線が@、A、Bの交点にぴったり合ったとき、これをフォーポイントサドルノッチという。4本の線が一点で合わさるという意味だ。
スカーフ下部の線は図5-3のように最初は高めに切っておき、ログCを載せてファイナルスクライブする前に線Dをスクライブ幅に合わせて切り込むことでフォーポイントサドルノッチとすることができる。
もっともフォーポイントにこだわらないのであれば、最初からスカーフを多めに取っておくことで切り直しを避けることが可能である。

図5-1 図5-2 図5-3
こだわりのログビルディング研究(その4)フォーポイントサドルノッチは有効か
サドルノッチの収縮のところで述べたように、上段ログがスムーズに落ちてこれるようにスカーフは平面であることが必要だ。
スカーフのきり方としては、以下の方法が考えられる。
(1)ログを納める前に大体の見当をつけておいてあらかじめ切っておく方法

この場合はフォーポイントにはならない。
(2)ログを納めてからスカーフを切っておき、上段ログを載せてからスクライバで当たって不足部分を切り足す方法

この場合、フォーポイントにすることが可能だ。ただしスカーフは上段ログを載せた状態で切り足すことになる。当然下段ログと組み合わせた状態でスカーフを切りたすため、スカーフを平面で仕上げることはかなり難しい。
(3)ログを納めた時点ではスカーフを切らないで、上段ログを載せたのちスクライバで当たってから一度ログをはずして切る方法
これも当然フォーポイントにできる。ただし一度納めたログを上段のスクライブをした後で下段のログからはずすなんていうことはとてもしていられない。また、再度同じ場所に上段のログを置きなおすことも大変だ。
(4) (1)と同様、多めにスカーフを切っておき、フォーポイントの位置から逆にスクライブ幅を決めてやる。
ログが素直な形状ならばできる。ただどうしても大きめなスクライブ幅になるだろうし、そのためログ壁の段数が増えたら目も当てられない。
計算でサドル下限の位置を求めてフォーポイントサドルノッチを作る方法があるらしい。
しかし該当するポイントは1ノッチあたり4ポイントある。通常の壁ではノッチは2個以上あるから8ポイント以上が現物合わせすることなくフォーポイントになるということは信じられない。
マシンカットログのように形状が揃っていたらもちろん計算で求めることはできる。ハンドカットログの場合、テーパーがあり曲がりがあり、凹みがありこぶもある。このようにいろいろな形状のログを使う場合、計算だけで求めるのは不可能だ。
私は見かけだけをよくするフォーポイントサドルノッチにそんなに意味があるとは思わない。スカーフは十分に切っておいて作業をシンプルにし、特性を安定させることのほうが重要だと思う。
日本のログハウス雑誌などではよくフォーポイントサドルノッチという言葉が出て来る。いかにも高級そうなイメージで書かれている。最初はなんだかわからなかった。いろいろ調べたら意味はわかったが作り方を明確に表しているものにはお目にかかっていない。
海外の文献にはフォーポイントの言葉が見つからなかった。いや、ひとつだけ見つけることができた。
ラドムスキーの4ポイントサドルノッチという文があったが詳細はまだわからない。
ラドムスキーはオーバースクライブの体系化を初めて行ったビルダーだ。現実的にはこちらのほうが重要そうである。次回はオーバースクライブについて説明しようと思う。
フォーポイントサドルノッチについてさらに詳しい知識がある方、ぜひ連絡ください。
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こだわりのログビルディング研究(その5)オーバースクライビング
スクライブ幅の決め方は、ログとログの隙間を測り、もっとも大きな隙間プラスカバー値(ログの重なり)とする。(ログビルディング教室第3回(6)を参照)
カバー値は適当なグルーブ幅になるように予め決めておく。
スクライビングは上記で決めたスクライブ幅でノッチ、グルーブ、木口と回り、1本の線となり完成する。
スクライブラインどおりに切り刻めばぴったりと下のログと合うわけだ。
ログは時間がたつと収縮する。サドルノッチのところでも述べたが、収縮量が材の方向により異なるためにノッチ部分はグルーブの部分より大きく収縮し、このためノッチの部分に隙間ができることになる。
将来できるノッチの隙間を考慮してグルーブのスクライブ幅をノッチのそれより大きくしてやるのがオーバースクライブである。
(注:スクライブ幅はグルーブで決めるため、逆にノッチ部分のスクライブ幅を小さくし、これをアンダースクライブと呼ぶ場合もある)
ではこのオーバースクライブ量はどのくらいかというと、ノッチスパンが5〜6mのとき約10mmである。
えっ?10mm?
こんなに広くするとログを積んだときに隙間があくじゃないか。
心配はご無用だ。ログはノッチ部分ですべての荷重を受け、変形し、下段のスカーフに喰い込む。ログ壁仮組み中はグルーブの隙間はなくならないが、屋根を載せた時点で隙間は無くなるとのだ。
このときグルーブに隙間は無いがグルーブ部分には荷重は加わっていない。時間がたちログが乾燥するにしたがってノッチ部分だけにかかっていた荷重がグルーブ部分に移ってくる。
オーバースクライブ量は経験的に決められているようで、ノッチスパン、ログ壁の高さ、気候(温度、湿度)高度、材の初期含水量、材の種類などで変わってくる。
オーバースクライブ量はログビルダーによっても異なっているようで、まったく考慮しない人もいればわずかにとっている人、大きくとっている人などいろいろだ。それぞれの環境によって問題ない場合もあるし問題になっている場合もあるのだろう。
スクライブ幅を変えるのはそれだけではない。以下にいくつかあげてみよう。
(1) ノッチ上部のリセス(リリーフカットとも言う)数mm
これはサドルノッチのところで述べたようにサドルが緩くなってきてもしっかりかみ合うように設けてある。
(2) ノッチの外側 5mm程度
外部壁は室内壁に比べて温度が上がらないため乾燥の進みが遅い。室内壁のセトリングが先に進んで隙間が開くのを防ぐためノッチの外側のスクライブ幅を大きくする。
最終的には外部壁も乾燥し下がるという理由で設けない人もいる。
(3) 木口の中央部 5mm程度
木口のグルーブは下段ログに合わせてUグルーブにする。ログはグルーブが広がるように荷重がかかるため下側にクラックが入りやすい。そのためU溝が浅いと溝の中央部が下段ログに当たってしまう。これを避けるためU溝を深くする。
(4) 室内壁の外側 量は?
(2)と同じ理由で、室内側が先に乾燥するので外側を大きくとってやる。ただし最終的に外壁が乾燥したときに外側に隙間が残る可能性がある。
これもする人としない人がいる。
いやー、いろいろな方法があるものだ。どの方法を選ぶか迷ってしまう。
身近に経験豊富な人のたてたログハウスがあって、数年後に問題が起きてなければその人の方法に従うのが確実だろう。
なお、オーバースクライブを体系的に説明している文献にはラドムスキーのものがある。
これを参考にするといかが。
http://www3.bc.sympatico.ca/delradomske/overscribe.html